日本経済新聞社の岩井淳哉記者との共著論文「受賞歴にもとづくノーベル賞予測」を公開しました
七丈直弘教授と日本経済新聞社 編集 サイエンスグループの岩井淳哉記者は、ノーベル賞に先立って授与される科学賞の受賞歴から、物理学賞・化学賞・生理学医学賞の受賞者をどの程度予測できるかを検証した論文「受賞歴にもとづくノーベル賞予測:前哨戦の受賞歴をどう読むか:予測手法の比較と2026年の候補」を、2026年10月2日にプレプリントとしてZenodoで公開しました。日本語版と英語版があり、両著者の貢献は同等です(責任著者:七丈直弘)。
日本経済新聞は2026年9月27日の朝刊1面「ノーベル賞、最有力は森氏 国内候補、日経が分析 前哨戦の受賞歴評価(チャートは語る)」(岩井淳哉記者)で、ラスカー賞など国内外146の科学賞の受賞歴から自然科学系ノーベル賞の受賞可能性を評価する数理モデルによる分析を報じました。同記事には七丈教授もコメントを寄せています。本研究は、このモデルの考え方を出発点としています。受賞歴のデータをWikidataと各賞の公式名簿から独立に集め直してモデルを再構築し、その予測力を検証しました。そのため、論文中の数値は記事で報じられた数値とは異なります。
再構築したモデル(基準モデル)は、各賞の受賞者がのちにノーベル賞を受けた割合を賞の重みとし、受賞数や重みの合計など6つの指標から候補者を順位づけます。2000〜2025年の78分野・年で検証したところ、実際の受賞者が上位30位以内に入ったのは39分野・年(50%)でした。毎年の受賞者数が限られるという選考の仕組みをモデルに組み込む方法など3つの代替手法とも比較しましたが、基準モデルを有意に上回るものはありませんでした。比較の手順と採否の規則は、検証を行う前に固定しています。
あわせて、予測に使う賞を「後からわかった実績」で選ぶと、過去の予測成績が実際より良く見えることを定量的に示しました。また、代表論文への被引用の伸びや特許からの引用を加えても、予測の改善は検出されませんでした。
2026年の予測では、ノーベル賞の発表前に全候補者の順位を固定し、その記録の存在時刻をOpenTimestampsでビットコインのブロックチェーンに記録しています。日本の機関に所属する候補者では、生理学医学で2026年のラスカー賞を受けた柳沢正史氏が30位で最も上位にあり、森和俊氏が42位で続きます。ただし、2026年の受賞を含めない場合には森氏が上位になるなど、この順序は情報の区切り方、入力とする賞の範囲、モデルの設定によって入れ替わります。順位は公開された受賞歴から求めた予測値であり、研究業績を評価するものではありません。
今後は、ノーベル賞に限らず、科学分野以外も含むさまざまなアワードについて分析を進めるとともに、その背景にあるブレークスルーが生まれ、評価されていくプロセスの分析に取り組んでいきます。
M2モデルによる2026年の全候補者の予測順位を、生理学医学・物理学・化学の分野ごとに公開します。発表前に固定した順位から、2026年に死亡が記録された候補者と、存命の可能性が低い高齢の候補者を除いて順位を詰め直したものです(「固定版順位」の列が除外前の順位)。氏名はWikidata、所属はDimensionsに収録された最新論文の所属住所にもとづくもので、国籍を示すものではありません。順位は公開された受賞歴から求めた予測値であり、研究業績を評価するものではありません。
M2モデルによる2026年の候補者リスト(Excel、3.1MB)
論文(Zenodo、CC BY 4.0)